老人ホームでの一日の過ごし方について

老人ホームという言葉を聞いたことがあっても、実際にそこで働いていたり利用している人でなければ、どのような過ごし方をしているのかよく分からない、という人もいるのではないでしょうか。今後さらなる高齢化が予想される現代において、老人ホームのことをしっかり知ることはとても大切なことだと思います。

具体的に、ここでの過ごし方を見ていきましょう。

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そもそも老人ホームとは

老人ホームでの過ごし方を知る前に、老人ホームにはいくつかの種類があることを把握しておきましょう。まずは介護付き有料老人ホームです。有料とあることから、費用さえ支払うことができれば24時間体制でサービスを受けられます。

この施設の特徴は、介護が必要になっても入居し続けられることであり、入居者数に対する介護職員や看護職員の配置が決められているのです。住宅型有料老人ホームは、介護に重きを置いたものではなくどちらかと言うと食事の提供や家事などのサービスを受けられるものです。

住宅型でも、仮に介護の必要性が生じた場合には入居を続けられる可能性があります。さらに、健康型有料老人ホームも注目されています。介護向けではなく、基本的に自分の身の回りのことは自分で行う必要があります。受けられるサービスは食事の提供などですが、他の施設との違いは施設内の設備やイベントが充実していてまるで自宅に居るかのような環境で、過ごせるところです。

老人ホームと一言で言ってもこれだけの種類があり、入居するための条件や費用、過ごし方などに違いがあるのです。

起床から入浴

老人ホームでの過ごし方は以下の通りです。まずは起床ですが入居者が自由に起きてくるケースもありますが、基本的にはスタッフが部屋を訪れてケアを行います。これはモーニングケアと呼ばれており、入居者の身支度を介助するものです。

私が初めて老人ホームで働いた時、何人ものモーニングケアをしなければならず、一日で辞めようかと思ったことがあります。人の着替えを介助するのは思ったよりも大変で、入居者は足腰が弱っていたりしっかり立っていられない人も少なくないので、朝だけで疲労困憊になることもありました。

ただ、毎日のようにモーニングケアを続けていると一人一人の特徴を掴めるようになり、コツが分かるので楽しく感じられるようになります。このモーニングケアですが、上述の通り入居者それぞれに特徴があるのできちんと理解しなければなりません。

例えば、毎日ラジオ体操を欠かさないという人や起きてすぐに新聞に目を通すのを日課としている人などです。こういった日課を終えてからのモーニングケアになるので、知らずに部屋に入ると怒られることもあります。7時からの朝食ですが、原則としてはリビングで食べます。

中には自室で食べる人もいますが、私の職場では事前にスタッフの許可を得る必要がありました。メニューは入居者の希望に応じることが基本で、入居者本人だけでなく家族からも聞き取りをして好みを確認する必要があります。

朝食後は健康チェックが行われます。これは施設の看護師の担当で、血圧から体温、脈拍まで測定しその日の体調なども確認します。これが終わり、看護師から入浴の許可が出されると順番に入浴です。これまで機械浴や個浴などを見たことがありましたが、一番驚いたのは大浴場です。

旅館のように広い浴場で、それぞれ気持ちよさそうに湯に浸かっているのが羨ましく思いました。入浴では介助はもちろんのこと、水分補給にも気を配る必要があります。いくら広いお風呂で気持ちよくサッパリしても、脱水症状になるケースもあるため飲み物の準備もしておくことが大切です。

嚥下トレーニングから昼食

入浴後は若干の自由時間があり、一息ついてから嚥下トレーニングをします。入居者の多くは飲みこむ力が弱くなっているため、喉に食べ物を詰まらせないために口の筋肉のトレーニングを行うのです。全員に共通する項目を行い、それからそれぞれのレベルに合わせた内容の訓練を30分程度続けます。

それから昼食です。昼食は朝食よりも豪華で、美味しいだけでなく楽しく食べられるような工夫が取り入れられています。昼食が老人ホームでの一日の最高の楽しみだ、という人も少なくありません。朝食の際に元気な人でも、昼食の食べ残しの具合などで体調を確認できるので、スタッフは入居者の様子を観察する必要があります。

レクリエーションから機能訓練

大体14時頃からレクリエーションが始まります。これは入居者全員で行うのではなく、体調やその日の気分によって自由に参加ができます。内容は散歩や簡単なゲームなどですが、リハビリを兼ねているところが特徴です。

ゲームも最初は簡単なものから始めるのですが、ある程度慣れてくるともう少し難しいものを要求してくることもあり、高齢者のパワーを感じることがあります。過ごしやすい季節になると、近場ではありますがバス旅行に行くこともありました。

実際、レクリエーションの時だけ元気になる入居者もいるほどで老人ホームの中でも欠かせないものです。夕食前に機能訓練という名の自由時間を過ごして、一人で過ごす人やリハビリを積極的に行う人まで様々です。

夕食から就寝

18時頃から夕食タイムとなり、リビングに集まります。他の職場では分かりませんが、私の職場では施設が良しと判断すれば、晩酌をすることもありました。ただし良しと判断されるには厳しい規定をクリアしなければならず、大体2割くらいの入居者しか認められてはいませんでした。

夕食は時間をかけるため、終了は19時30分近くになります。夕食後はナイトケア、すなわち歯磨きやパジャマに着替えるなどの身支度をして就寝の準備をします。場合によっては入れ歯の洗浄やオムツを履かせることもあるため、モーニングケア同様に一人一人の特徴を掴むことが大切です。

21時になると就寝で、一定の時間になるとスタッフで見回りをしたりナースコール対応なども行います。

入居者が快適に過ごすために

このように、老人ホームでの過ごし方は基本的には毎日同じことの繰り返しです。しかし、その中でも食事やレクリエーションの内容、嚥下トレーニングのレベルなどは日々変わっており入居者を飽きさせないための工夫が取り入れられています。

強制的に何かを行わせることもなく、希望すれば自分の好きなように過ごすことも可能です。